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加寿子のひとりごと
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-- 第10回 -- スプレー塗料をベランダで


 テレビ収録の打ち合せで、あるマンションのお宅にお邪魔したときのことです。
 ダイニングテーブルのイスの張り替えをしようということだったのですが、イスの上にベビーチェアが置いてありました。このチェア、ビニールの座面に穴があいて、鉄のパイプ部分も汚れ、ちょっとみすぼらしい感じ。そこで、ついでにベビーチェアもきれいにしようということになりました。

 問題はパイプの塗装をどこでするかです。結局撮影の時間もあり、ディレクターが「ベランダで塗ってください」というのです。
 「それならば、飛び散らないハケ塗りしかない」と考え、まず頭に浮かんだのが水性ツヤあり塗料です。ところが、ほとんどの水性塗料は、乾いてからほんのわずかに粘着性が残る欠点があります。たとえばテーブルを水性塗料で仕上げると、本を乗せたら、くっついてしまうようなことが起ります。したがってよく手でさわるパイプ部分には使いたくありません。

 そうかといって、鉄部用や建物用の油性塗料は、乾くのに何時間がかかってしまうので、1日ですべての作業を収録しなければならない今回の場合はとても使えません。
 残るはスプレー塗料。ラッカースプレーは塗ってある塗料を犯す恐れがあるので、ラッカー系ではないアクリルスプレーを選ぶことにしました。ただしスプレー塗装は思いのほか広く塗料が飛び散るのです。
 「ベランダでスプレー塗料を塗るなんて」「さあ、どうしよう」。本当に頭を抱えてしまいました。

 以前にダンボール箱を横にし、その中に塗装するものを入れて、スプレーしたことがあります。うまくいくかなと思ったら、スプレーした霧状の塗料がファッと戻ってきてしまって、最悪でした。
 なんとかよい方法がないものかと思案し、塗料メーカーの方に相談したところ、ダンボール箱の奥の面に穴をたくさん開けるといいというのです。そうすると霧状の塗料の戻りが少なくなるのだと。ただ、塗料がその穴から抜けていくと、まわりを汚すので、奥の面の外側から新聞紙を上だけ止めて、たらしておくといいというアドバイスも受けました。
 それでも、すべての塗料が抜けていくとは考えられません。寝ても覚めても考えて「そうだ、塗料を吸収してしまえばいいんだ」。

 収録の当日、まず大きめで奥行きのあるダンボール箱を選び、底の面にプラスドライバーで、ブスブスとできるだけたくさんの穴をあけました。それを寝せて、外側には新聞紙をセロテープで止めて、箱の内側にはトイレットペーパーをテープで貼りました。そう、トイレットペーパーに吸収させようと考えたのです。
 もちろん、万一のために、ベランダの窓や手すりなど、すべて覆いをしておきました。
 さあ、スプレー塗装の開始です。この装置はまったくの初体験ですから、内心ドキドキでした。座面をはずしたベビーチャアをできるだけ手前に置き、スプレーを始めたら、霧状の塗料は戻ってこないし、まわりも汚れません。大成功です。困ったときこそアイデアが生まれるものです。

 キャラクター柄のビニールの座面を、紺地にテディベアの布で張り替えて、とてもかわいいチェアが出来上がり、大好評のうちに作業は終了しました。実はこのチェア、フリーマーケットで300円で買ったものとかで、「これならフリーマッケットで1000円で売れるわね」と奥さま。みんなで爆笑しました。

*この日の収録の内容を載せたページはこちらです。



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