ふみこさんのドイツ話

ドイツの暮らしには独特のドイツらしいスタイルがあります。このドイツらしさは、街やお店や住まいの中、あるいは深くて広いDIYの森の中でヒョイと顔を現します。それが私を楽しませたり、驚かせたり、戸惑わせたりするのです。私の体験したドイツの生活物語を、日本の暮らしと比べながら読んでいただければ幸せです。
ドイツ地図 

ヨーロッパ地図


 
 第1回  ドイツのトイレ事情

 フランクフルトのわが家には、トイレが二つある。一つは、洗面所、バスタブ、シャワールームとトイレがワンセットになっていて、こういうのを何て表現したらいいのか困ってしまうのだが、とにかく、広い部屋にまとまっている。もう一つは、トイレと小さな洗面所が付いているだけのコンパクトなもので、日本の団地やマンションのトイレに近い。こう書くと、豪華な一戸建てなんでしょうなんていわれそうだが、何のことはない、七十七平方メートルのフラット(アパート)なのだ。ただし、日本の同規模のマンションよりは随分と広く感じる。構造の違いだろうか。小さなトイレは、来客用なのだそうだ。このトイレは確かに便利だった。日本から遊びにきた友人を泊めた時や、不意の来客があった時に、広い方のトイレのお掃除をしていなくても、気を揉まなくてよいし、朝の忙しい時間にトイレ争奪戦をしなくてよいから。

 ある日の夕方、突然イタリア人の大家が、ドイツ人の管財人をつれて、わが家にやってきた。玄関ドアを開けると、いきなり、小さなトイレへ直行、ドアをパッと開けた。二人はトイレを眺め、決まり悪そうに言い訳をした。ケラー(地下室)の天井から水が漏れていて、その上がちょうどわが家の小さなトイレだった。大家と管財人は、私がトイレを詰まらせて、水を溢れさせたのだろうと推測したのだった。残念でした。うちのトイレはピカピカに掃除してあって、水の一滴はおろか、チリの一つも落ちていなかった。二人が帰った後、私は本当にホッとした。もし、水がわずかでもこぼれていたら、水漏れの責任を問われていたかもしれないのだ。そうなると、どうなるか。そう、修理代を請求されてしまう。危なかったなァ・・・。

 ドイツのトイレ事情は日本と違う。まず、公衆トイレというものはない。フランクフルトの街に買い物に出て、トイレに行きたくなったらどうすればよいか、一番確実なのは、デパートに行くことだ。間違っても公衆トイレを探そうと思ってはいけない。そんなもの、ないからだ。地下鉄や、近郊線の駅にも、トイレはない。で、私は、フランクフルトの中心駅ハウプトヴァッヘのターミナルデパート、カウフホーフのトイレに行くことに決めていた。確か、四階だったと思う。トイレがあるのは。さて、ここからが大切なのだ。

 トイレの入り口には、白衣を着た女性が、腰掛けている。彼女の前には、小さなテーブルまであって、テーブルの上にはコインがたくさんあった。そう、トイレは有料なのだ。しかし、料金が決まっている訳ではなく、チップに近い。見ると、50ペニヒ(約30円)とか、どんなに多くても1マルク(約60円)くらいのものだった。トイレにはいるのにお金がいるなんてと思う人もいると思うが、私はこれでいいと思った。彼女はただお金をもらっているのではない。トイレから用を済ませた人が出てくると、お掃除をするのだ。毎回必ず。だから、トイレはとても清潔で、快適だった。それだけではない。安全面でも大変な役割をしている。トイレは犯罪が起きやすい場所でもある。白衣の彼女は、見張り役、ガードマンでもあった。

 フランクフルト中央駅のトイレも印象的だった。電車から降りてすぐ、子供がトイレに行きたいと言い出した時には困った。少しイライラしてしまった。ま、しかし、それが子供というものだ。幸い、駅のトイレがすぐ見つかったので連れて行った。が、またしても困った。小学校の低学年とはいえ、男の子なので、男子用トイレに入らなくてはいけない。私はどうすればいいんだろう。わかりますか。この戸惑いが・・・。トイレの入り口で、私の心配はスーッと消えてしまった。白衣を着た男の人が3人いて、そのうちの一人が子供を連れていってくれたのだった。子供にはコインを持たせておいた。しばらくして、子供はスッキリしたのか、笑顔で戻ってきた。ここの料金は、50ペニヒだったそうだ。私はこの時、あらためてドイツのトイレのシステムに感謝した。と同時に、ドイツの治安の良さを、改めて感じたのだった。安全も清潔も、ただでは得られない。

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